信じられるか。これが、高校野球だ。
9回裏ツーアウト。スコアは3-4、1点ビハインド。同点を狙った走者が、ライトからの矢のような送球で、ホームベース上で激突の末にアウト。あとアウトひとつで、春のセンバツ王者・横浜高校の夏が終わるはずだった。サーティーフォー保土ケ谷球場の誰もが、その悲劇的な結末を覚悟した。
しかし、本当のドラマは、絶望の淵から始まった。
王者を完璧に追い詰めた平塚学園の猛攻と鉄壁の守り、そして土壇場で奇跡を起こした横浜キャプテンの「魂の一振り」。勝者も、敗者も、監督も、選手も、誰もが涙した、この伝説の一戦のすべてを、あなたの心に刻み込む。
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序盤、センバツ王者を沈黙させた平塚学園の猛攻
試合の主導権は、序盤から完全に平塚学園が握っていた。彼らは臆することなく、真っ向からセンバツ王者に襲いかかった。
初回、先頭打者がいきなり二塁打を放つと、4番・森選手がレフトへ先制タイムリー。王者からいとも簡単に奪った先制点に、平塚学園アルプスは揺れた。続く2回には、満塁のチャンスから押し出しと捕逸で2点を追加。横浜の先発投手を早々にマウンドから引きずり下ろし、スコアは3-0。横浜ベンチには、焦りの色が浮かび始めていた。
そして4回、7番・石塚晃世選手の打球は、乾いた音を残してライトスタンドへ。完璧なホームランでスコアは4-0。機動力と長打力を織り交ぜた多彩な攻撃で、あのセンバツ王者を完全に守勢に回らせたのだ。スタンドはどよめき、誰もがこの「番狂わせ」の現実味を帯び始めていた。
王者の前に立ちはだかった二つの壁、エース石塚の力投とライト藤原の鉄壁

平塚学園の強さは攻撃だけではなかった。二つの巨大な壁が、横浜の反撃の意志をことごとく打ち砕いていく。
一つは、マウンドに立つ背番号1、エース・石塚蒼生。彼の右腕が、この日の伝説の序章を描いた。横浜の強力打線に対し、臆することなくストレートを投げ込み、鋭い変化球で的を絞らせない。その堂々たるピッチングは、チームに勇気と、勝利への確信を植え付けていった。
そして、そのエースの魂の投球に応えるかのように、ライトの守備位置で超人的なプレーを連発したのが、背番号9、藤原レイだった。
圧巻だったのは中盤の守備。フェンス直撃の長打かと思われた大飛球に、藤原は一切躊躇しなかった。一直線に背走し、フェンスに体を激しく打ち付けながら、それでも白球は彼のグラブの中に収まっていたのだ。横浜のチャンスが、悲鳴と共に消えていく。
運命の9回裏、1点差に詰め寄られた一死一、二塁。2番・為永選手の打球はライト前へ。同点だ!誰もがそう確信した次の瞬間、球場が息をのんだ。ライト・藤原の右腕が閃く。地を這うようなレーザービームが、一直線にホームへ。三塁走者が必死に腕を伸ばし、ホームベースへ滑り込む。砂塵が舞い上がる中、ボールを受けた捕手のミットが走者に触れる。クロスプレー!球場全体が固唾をのむ。一瞬の静寂の後、球審の右腕が力強く横に振られた。「アウト!」
ツーアウト。
天国から地獄へ。同点の夢は、またしても背番号9の信じられないほどの強肩によって、ほんの数センチの差で打ち砕かれたのだ。
魂の一振り。キャプテン阿部、すべてを背負った逆転サヨナラ二塁打

だが、神様は、まだ物語のエンディングを用意していた。
打席には、キャプテンの阿部葉太。今日、チームを勝利に導けずにいた主将。
ツーアウト二、三塁。球場を埋め尽くす凄まじいプレッシャー。敗北の二文字がベンチを覆う。この夏、何度もチームを鼓舞してきたキャプテンが、今、チームの、スタンドの、全ての想いをその肩に背負ってバッターボックスに立つ。
追い込まれたなかで。
振り抜いたバットが、魂を込めて白球を捉えた。
打球は、今日、何度も横浜の夢を打ち砕いてきたライトの右へ。高く、高く舞い上がった打球は、横浜ファンの祈りを乗せて、ライトフェンスを直撃する!
魂の、逆転サヨナラタイムリーツーベースヒット!
三塁ランナーが、そして二塁ランナーも雄叫びを上げながらホームへ滑り込む。
5-4。
その瞬間、横浜の選手たちが駆け寄り、ヒーロー・阿部キャプテンを囲んで歓喜の輪を作った。
試合後、両チームに流れた涙の意味

この試合の結末を象徴していたのは、試合後の光景だった。
敗れた平塚学園の選手が、悔し涙にくれる。あれだけ完璧な試合をしながら、あと一歩届かなかった。力投を続けたエース石塚も、鉄壁の守りを見せた藤原も、その場に崩れ落ち、涙が止まらない。その涙は、彼らの血の滲むような努力と、揺るぎない誇りの証だった。
しかし、勝った横浜の選手、監督の目にも、同じように涙が光っていた。
それは、計り知れないプレッシャーからの解放、そして死の淵から生還した安堵の涙。勝者も敗者も、誰もが涙を流す。それほどまでに、この一戦は両チームの魂を削り合う、壮絶な死闘だったのだ。
整列し、互いの健闘を称え合う両チームの選手たち。その姿に、スタンドからはこの日一番の、温かく、そしていつまでも鳴りやまない拍手が送られた。
まとめ:伝説を力に変え、横浜はいざ準決勝へ
勝者と敗者。歓喜と涙。
これぞ高校野球。これぞ、夏の大会の厳しさと素晴らしさ。
9回ツーアウトから決して諦めなかった横浜ナインの執念と、センバツ王者をあと一歩まで追い詰めた平塚学園の勇気。この試合に、敗者はいなかった。
伝説となったこの一戦を乗り越え、横浜は心身ともに一回りも二回りもたくましくなって、ベスト4の舞台へ。夢の甲子園まで、あと2つ。この奇跡を力に変え、彼らは頂点を目指す。